はーとん

介護保険は医療(健康)保険のように「誰でも」「いつでも」「どこでも」サービスを受けられるわけではありません。

お住まいの自治体に介護認定の申請を行い、介護や支援が必要な状態と認められて(要介護認定されて)はじめて要介護要支援認定が与えられ、介護保険を適用した各種サービスを受けることができます。

住宅改修を行う場合も上記手続きを踏まえたうえで、はじめて利用が可能となります。

では具体的にどのような方が介護認定の手続きをすることができるのでしょうか?

どんな介護保険の資料にも載っているけど、初めて利用する方にはわかりにくい内容をかいつまんで説明してみたいと思います。

ちなみに認知機能の低下等でも介護度が変わりますが、こちらでは主に住宅改修に関する心身状態についてのお話に絞ってお話します。

介護認定申請の対象者

介護認定の申請ができる方は、下記の2パターンのいずれかに当てはまる方です。

1.65歳以上の方で、日常生活で介護や支援が必要になった方(1号被保険者)

書かれている文言は理解できますが、なかなかフワッとした言い回しですよね。

一般的には老化に伴う症状により病院に通っていて日常生活が少し不自由になってきた…ぐらいの症状からが対象だと考えてもらう方が良いでしょう。

ほぼ寝たきりや半身まひになるなどの症状なら明らかに自立生活が困難なので、すぐ要介護認定を受け各介護サービスを受けるべき対象だと誰が見ても認識されます。

ただ一般の方にとって難しい、あるいは一番気になるのは「ちょっと膝が…」とか「ちょっと腰が…」というような方は、はたして要介護や要支援と認定されるのか?というところだと思います。

ご高齢の方は基本的に頑張り屋さんだったり痛みを我慢される方が多いので、息子や娘の立場からみれば「本人が大丈夫だって言ってるし…」となることが多いんですね。

要介護認定は各自治体の介護認定審査会によってのみ決定されるため、私のような関係のない一個人が断定的な言及はできません。

ですが要介護認定の最低の判断ラインは、今まで介護認定を受けてこられた方を見てきた経験上、「心身に病院に通う必要がある何かしらの症状があること」、「生活の中で一部できなかったり困難な動作や姿勢があり、それにより生活そのものに支障をきたしていること」ではないかと個人的には考えています。

例えば「歩行はさして問題ないけどトイレで座ると立ち上がりが非常に困難」だとか「階段を上る時はあまり支障がないけど降りる時がとても苦労する」などの症状があり、かつその症状のために病院に通っている場合なども要介護や要支援認定となる場合が多いようです。

ちなみに介護認定を受ける際にお医者さんのみが作成する「主治医意見書」という書類が必要になりますので、要介護や要支援認定されるためには、実際に心身状況に起因する通院などがあることが必要とされるケースがほとんどかと思います。

突発性の事故や病気などの場合も、自宅で療養できる状態になれば、介護認定のために「主治医意見書」を作成していただけるケースが多いようです。

2.40歳以上65歳未満の方で、老化が原因とされる病気(16種類の特定疾病)
  により介護や支援が必要になった方(2号被保険者)

本来介護保険のサービスは65歳以上から利用可能とされていますが、老化の速度が人により違っていることから、主に老化に起因した症状だろうという16種類の疾病に関しては、まだ65歳以下の方であっても介護保険を利用できるようにしましょうという枠になります。

65歳以上になると自動的に1号被保険者に切り替わります。

ちなみに16種類の疾病とは具体的に下記の診断を受けておられる方です。

①がん(回復の見込みがないと判断されたもの)、②関節リウマチ、③筋委縮性側索硬化症、④後縦靭帯骨化症、⑤骨折を伴う骨粗鬆症、⑥初老期における認知症、⑦進行性核上性麻痺・大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病、⑧脊髄小脳変性症、⑨脊柱管狭窄症、⑩早老症、⑪多系統萎縮症、⑫糖尿病性神経障害・糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症、⑬脳血管疾患、⑭閉塞性動脈硬化症、⑮慢性閉塞性肺疾患、⑯両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う変形性関節症

コチラについては生活に支障をきたすケースの多い疾病ですので、ご本人さまやご家族の負担を減らす意味でも、介護保険を使って各介護サービスを受けられた方がよいと思われるケースになります。

2号被保険者に該当する方はすでに病院へ通われ診断を受けているケースがほとんどですので、介護認定の申請をすればだいたい要介護や要支援と認定されるケースが多いようです。

まとめ

上記が介護認定申請をして要介護認定がなされ介護サービスを利用できるであろうケースとなります。

ただし自治体等によっても少しずつ審査に関する判断や取扱いが異なるケースもあるかと思いますので、心配な方は役所の介護保険係などでご確認いただく方が確実です。

役所の方であっても介護認定についての確定的な判断はできませんが、申請の方法やだいたいの感触などは教えてくれることもあるようです。
 

それと一つだけこれを読んでおられるご家族さまにお伝えしたいことがあります。

上記の要介護認定の大まかな判断ラインについてですが、「ウチの親も当てはまるわ」といって、ご両親に「介護保険の認定申請したら?」などと安直にストレートにお伝えすることだけはやめてください。

人には尊厳という大切なものがあります。

老いるということは一つづつできないことが増えていく状態ということもできます。

そんな中でも老いることに抗い、他人に迷惑をかけまいと頑張っておられるご高齢の方がほとんどだと思います。
体に不調や痛みがあったとしても、それを「生きている」実感と感じて過ごしておられる方もいます。

そういった方に「介護保険使ったら?」という話を安直にすることは、「もうこの世に不要といわれている」と受け取られるご高齢の方も多くおられます。

「老い」を他者から明確に自覚させられ、尊厳を傷つけられたご高齢の方は急激に老いていかれます。
果たしてそれはご家族さまにとって望まれる結果でしょうか?

介護保険の話をするのであれば、まずはご両親の弱音をキチンと聞いてあげてください。
そしてその解決策の一つとして「こういう制度もあるよ」という方向でお話をしてあげてください。

「介護」という単語自体を嫌われるご高齢の方も多くおられます。
もしご本人が拒否した場合は無理強いをしないであげてください。
「せっかく保険料を払っているのだから介護保険は使わないと損」などという考えは全くもって論外です。

少しの手助けがあればまだまだ頑張れる

ご両親にそんな気持ちになってもらうために介護保険を使ってもらえたら最高の親孝行になると思います。