全体像

「介護保険の住宅改修」とはいったいどういったものなんでしょう?

そもそも介護保険の利用自体が「いざという時」に初めて直面することなので、ご存じなくて当然だと思います。

ましてや介護サービスの一つである「住宅改修」について、あらかじめ詳しくご存じだったという利用者さんに、今まで一度もお会いしたことがありません。

ですのでここではできるだけ簡単に介護保険の住宅改修の大枠についてご説明します。

介護保険の住宅改修とは

”在宅の要介護、要支援認定を受けている人が居住する住宅に手すりの取り付けなどの小規模な住宅改修を行う場合、その費用の一部を介護保険から支給します”

たとえば大阪市のホームページには介護保険の住宅改修についてこのように記載されています。

医療保険を例にすれば、お医者さんに治療してもらった時に医療保険適用の治療の場合は1割や2割、3割の費用負担で済みますよね。

それと同じように介護保険適用の小規模な住宅改修について「要介護認定を受けておられる方」には保険を適用した費用負担がなされ、利用者さんの費用負担が1割や2割、3割となる仕組みになっています。

医療分野の皆保険が「医療保険(健康保険)」、介護分野の皆保険が「介護保険」ということになります。

そしてその介護保険の様々なサービスの中の一つに「住宅改修」があるという位置づけになるわけですね。

介護保険住宅改修の支給上限額

介護保険における住宅改修は、要介護状態区分に関わらずおひとり20万円を上限として改修費用が認められており、改修費用の1割、2割、3割を自己負担する形になります。

たとえば総額20万円の工事を実施する場合の内訳(1割負担の場合)は「介護保険18万円+自己負担2万円」ということになります。

ご夫婦でお住まいの場合でお二人とも要介護認定を受けておられる場合は、ご主人20万円+奥様20万円の支給上限額をお持ちだということになり、お二人がお住まいの住宅の改修に対して利用できます。
この場合は一世帯でお二人分の40万円の支給上限額の枠をお持ちだということになります。

また支給上限額が一人20万円ということですので、初回に20万円を超えない工事を実施した場合は、そののちに残りの分を利用することも可能です。

たとえば初回に総額10万円の工事を実施した場合は、次回に総額10万円の工事を介護保険を適用して実施できることになります。
(初回:介護保険9万円+自己負担1万円 次回:介護保険9万円+自己負担1万円 *自己負担1割の場合)

一人20万円の支給上限額を超える金額の工事の場合は、18万円(自己負担1割の場合)までが介護保険の支給となり、差額は全額自己負担となります。
(例:工事総額50万円 → 介護保険18万円+自己負担32万円)

介護認定更新の結果、要介護状態区分が3段階以上上がった場合や転居した場合は、再度20万円の支給上限額が付与されます。

なぜ介護保険で住宅改修ができるの?

介護保険のサービスといえば「デイケア」や「訪問介護」をイメージしがちで、基本的には間違っていません。

そもそも介護保険制度とは高齢者の自立生活を支援することを目的とし、それに係る多様なサービスを提供することを原則としており、実際に利用されているサービスも「デイケア」や「訪問介護」が多いためです。

そんな介護保険制度のサービスの一つである「住宅改修」の骨子としては、「住んでいる家に少し手を加えれば、大掛かりな介助なしに自立して在宅での生活ができる」ことを大きな目標としています。

ですので一般的に介護保険の住宅改修を利用される方は「手すりがあったり段差が少なければ自分一人で行動ができる」という方が多いです。

「デイケア」や「訪問介護」は基本的に24時間年中無休のサービスではありませんので、夜間などの宅内移動や姿勢転換を自立的に行えるように実施されたり、他の介護サービスを受けておられない方の転倒・転落の予防的に実施されることが多いのが「介護保険適用の住宅改修」ということになります。

まとめ

制度としての「介護保険の住宅改修」の大枠についてはご理解いただけましたでしょうか?

介護保険制度や住宅改修の制度のシステマチックな内容に関する理解もなかなか骨が折れますが、同時に利用者さんの気持ちについてもぜひ思いを馳せていただきたいところではあります。

できれば人に迷惑をかけずに自立して今まで通りの生活がしたい

実はこのようにお考えになるご高齢の方はたいへん多くいらっしゃいます。

体が元気なまま、いつまでも若い時と同じように自由に過ごしたいと考えることは、人類共通の理想です。

ただ不調を抱えていたとしても、1本の手すりや少しの段差解消でより安全に今まで通りの生活を送ることができる方が多いのも事実です。

自分の意志で行動して生活できること

これがご高齢の方にとっての”心の健康”のためには何より大切です。

それを実現できるようにするために「介護保険の住宅改修」という制度が用意されているとお考えくださいね。