手すり

介護保険が適用される住宅改修の内容は決まっており、下記の通りとなります。

1.手すりの取り付け
2.段差の解消
3.滑り防止や移動を円滑にするため等の床または通路面の材料の変更
4.引き戸等への扉の取替え
5.洋式便器等への便器の取替え
6.上記1~5の各工事に付帯して必要と認められる工事

基本的には記載内容通りの工事が対象ですが「こういう場合はどうなの?」というケースが多い内容でもあります。
利用者さんの身体状況や家によってそれぞれ状況が違いますからね。

介護保険の住宅改修の手続きの際に最もキモになる部分といってもいいかもしれません。

それでは一つ一つの項目についてもう少し詳しく見ていきましょう。

1.手すりの取り付け

基本的に家の中や門から玄関までなど、利用者さんの動線上にかかる部分への手すりの取り付けが対象となります。

取付するケースが多い場所としては一般的にはトイレ、浴室、階段、玄関が多いですね。

移動距離が長い場所、高低差のある場所や座り姿勢が必要な場所が主な設置場所となります。

設置する位置やサイズは、利用者さんの体格や身体状況に合わせて検討する必要があります。

2.段差の解消

「段差の解消」と聞くと玄関ポーチから室内まで真っ平な、最近の分譲マンションのような状態をイメージしがちですが、現実問題として特に戸建住宅の場合は動線上の全てを真っ平にすることは不可能に近いです。

ですので段差の解消だけではなく「段差の緩和」もこの中に含むと考えてください。

住宅や利用者さんの心身状況により真っ平をめざす時もあれば、段差を小さくしたりスロープ状にしたりと、利用者さんの身体状況やご家族さんの使い勝手、建物の状況などもあわせてどういう対策を取るか検討が必要になる内容です。

室内では玄関や浴室、屋外だと門から玄関ポーチまでの間の工事になることが多い内容です。

3.滑り防止や移動を円滑にするため等の床または通路面の材料の変更

わかりにくい表現なのですが、要するに「滑りにくく移動しやすい床へ変更しましょう」という内容になります。

この内容で一番多い改修場所は浴室、トイレ、玄関外、階段、和室でしょうか。

浴室、トイレ、玄関外に関しては床がタイルだからということですね。
ご高齢の方でなくても滑ると危険なところですので何かしらの手立てを…というところです。
新しいお家ほど床がタイルではない浴室やトイレが増えてはいますが…

階段も同様に足を滑らせての転倒や転落の危険がある箇所ですので事故が起きにくい処置をしましょうという部分です。

和室に関してですが、意外と介護保険の世界では「畳」は歩きづらく滑りやすい床として認識がされています。
靴下を履いて畳の上を歩くと畳表の目の方向に滑りやすいというのはなんとなくわかりますよね。
この畳をフローリングやクッションフロアなどの滑りにくい床に変更する内容も改修の対象になります。

4.引き戸等への扉の取替え

どの住宅にも一つはある開き戸ですが、開閉の際に扉を避けるため体の移動や回転が必要となり、介護保険の世界では不便とされています。

実際にドア(開き戸)の前に立ち、体の移動をせずに扉の開閉を試してもらえれば、それなりに困難な動作であることが実感できます。(開き戸は必ず体の移動を伴わないと開閉ができません)

そういった開き戸を引き戸などに変更する内容が改修の対象となっています。

引き戸「等」とあるのは家の状況により引き戸にできず、やむを得ずカーテンなどに変更したり撤去する場合も含んでいます。

また握りにくいドアノブを棒型のハンドルに変更したり開口幅を大きくするための建具交換なども含みます。

5.洋式便器等への便器の取替え

和式便器を洋式便器に交換する内容が主となります。

また現在洋式便器であっても、便器の位置や向きなどを変更する場合にはこの項目に該当します。

和式から洋式便器へ交換するタイミングに合わせて温水洗浄便座を設置する場合に限って温水洗浄便座も対象に含まれます。

ただ単に洋式便器を洋式便器に変更する内容や、既存の洋式便器に温水洗浄便座だけを追加する内容などは介護保険が適用されません。

6.上記1~5の各工事に付帯して必要と認められる工事

一応1~5までの項目の工事に関して介護保険の対象工事となるのですが、それらを実現するために上記には分類されないけどどうしても必要な工事というものが出てきます。

一般的にここに該当するもので多いのは下地工事や補強工事と呼ばれる類の内容ですかね。

例えば、たかが手すりと考えられがちですが全体重を預ける「命綱」ともいえるものですので、しっかり強固に設置されていないといけません。

例えば床材の変更をするにあたって床の下地がしっかりしていないと強度を保持できませんので、補強工事が必要になりますよね。

その手すりの機能・性能を確保するための下地工事、床を床として利用するための補強工事などはここの項目に該当します。

まとめ

住宅改修の項目として挙げられている6つの項目は、字面だけ見るとさまざまに拡大解釈できてしまうのですが、2000年からスタートした介護保険が運用されてくる中で改修内容が概ねパターン化されており、なんでもかんでも自由に解釈して施工できるわけではありません。

また住宅改修の支給上限額が決まっているため「ここは介護保険の福祉用具購入やレンタルで…」「ここはもう実費を払って通常工事で…」などの選択が必要になることも状況によってはありえると思います。

そういった全体のバランスについてはご本人さんのご希望をお聞きした上で、介護支援専門員(ケアマネージャー)さんと私どものような工事業者が話し合いの上、利用者さんの身体状況を確認しつつ調整していくことになる場合が多いです。

大阪市の場合は介護保険とセットで利用できる「高齢者住宅改修費給付事業」という制度もあります。

利用者さん本人が市民税を支払っている場合は給付対象外となってしまいますが、市民税非課税世帯の場合などは給付基準額30万円のうち支給率が9割になるなど、介護保険支給上限額では不足してしまう方に対する支援の意味合いを持った制度となっています。

その他の自治体でも同様の制度がある場合がありますので、費用的な面でお困りの方は一度お住まいの自治体にお問い合わせされてみてはいかがでしょうか?